Claude Opus 4.8には「effort」という設定がある。モデルがどれだけ考えてから答えるかを5段階(low / medium / high / xhigh / max)で調整するもので、Claude Code・Cowork・通常のChatすべてで切り替えられる。
「上げれば賢くなる」——直感的にはそう思える。では実際、何がどれだけ変わるのか。トークン消費は?速度は?答えの質は?
公式の説明だけではわからなかったので、同じ課題を全レベル×3サーフェス(Claude Code / Cowork / claude.aiチャット)に投げて、合計27回実測した。結論を先に書くと:
- 正解率は1段階も変わらなかった(全27run正解)
- 出力トークンは約7倍、処理時間は最大6倍に増えた
- 変わるのは「答えの正しさ」ではなく「答えの確かめ方と作法」だった
数字と画面キャプチャで順に見ていく。
検証環境
検証環境
- モデル: claude-opus-4-8(1M context)
- プラン: Claude Max(定額。$表示はAPI換算の参考値)
- サーフェス: Claude Code v2.1.162(Windows / PowerShell)、Claude Cowork、claude.ai
- 実施: 2026年6月6日、計27run(Code 13・Cowork 8・Chat 5・ultracode参考1)
- 方式: 1run=1新規セッション(コンテキスト持ち越しなし)
- 計測: トークン=/costコマンド実測値、応答時間=自作ステータスラインのターン別API処理時間
- 採点: コーディング課題は筆者側の隠しテスト15項目、推論課題は数値・分解・字数の3点で機械的に判定
計測に使った自作ステータスライン(effort・応答1回ごとのAPI処理時間・使用量ゲージを1行表示)は前回記事で作ったものをそのまま使っている。


effortの設定方法
Claude Codeでは /effort コマンドでスライダーが出る。low〜maxの5段階に加えて、右端に「ultracode(xhigh + workflows)」がある。ultracodeはeffortというより別の実行モードなので、この記事では末尾に参考値として載せる。

CoworkとChatにも同じ5段階(低・中・高・特大・Max)がモデル選択まわりにある。なお、Opus 4.8リリース時のバナーでは「既定はhigh」と案内されていた。
検証設計:採点を機械化できる2課題
「賢さ」の比較は主観が入りやすい。今回は採点を完全に機械化できる2課題に絞った。
Task A(コーディング)
SemVer 2.0.0準拠の semver_compare(a, b) をPythonで実装させる。仕様5項目を明示し「コードのみを返してください」と指示。採点は筆者側で用意した隠しテスト15項目(SemVer公式例の全順序・ビルドメタデータ無視・数値coreの大小など)で行い、モデルにはテストの存在を知らせない。
Task B(推論+文章)
ベイズの定理の定番問題(感度99%・偽陽性率5%・有病率1%のとき陽性的中率は?正解≈16.7%)。「数値と求め方を150字以内で」と指示。採点は (1)数値 (2)ベイズ分解の正しさ (3)字数(改行除き・Pythonでカウント)の3点。
プロンプトは全サーフェス・全レベルで一字一句同じ。各runは新規セッションで実行した。
結果①:トークンと時間は確実に増える(Code定量)
まず前提として、Task Aは全レベル15/15パス、Task Bは全レベル数値・分解とも正解だった。正解率はeffortで1段も変わらなかった。そのうえでコストを見る。


| effort | Task A out_tok | Task A 時間 | Task B out_tok | Task B 時間 |
|---|---|---|---|---|
| low | 429 | 6s | 166 | 6s |
| medium | 530 | 11s | 249 | 6s |
| high | 871 | 10s | 374 | 7s |
| xhigh | 1,600 | 20s | 859 | 12s |
| max | 3,100 | 34s | 1,100 | 15s |
- 出力トークンはレベルごとにおおむね倍増し、low→maxで約7倍
- API処理時間はTask Aで約6倍、Task Bで約2.5倍
- $コスト(API換算)はキャッシュ読み書き量でぶれるため、effortの比較指標としては不適だった。純粋な比較はout_tokと時間で見るのが正確
- Maxプラン(定額)では金額は変わらない。実質コストは「待ち時間」と「5時間枠の消費」になる
結果②:正解は変わらない。変わるのは「作法」
数字が増えて何が変わったか。Task Aのコードはどのレベルも正しく動く。違いはコードの「佇まい」に出た。
- low: 裸の実装(コメントほぼなし)
- medium〜high: docstringやコメントが増える(未使用のimportが残ることも)
- xhigh: コメントが日本語になり、未使用importが消えた
- max: さらに丁寧——だが同条件で再実行したらコメントが英語に変わった。出力のばらつきは実在する
Task Bはもっと面白かった。150字制約の遵守を3サーフェスで比べた結果がこれ(数字は求め方の字数・改行除き、○=150字以内)。
| 字数 | low | medium | high | xhigh | max |
|---|---|---|---|---|---|
| Claude Code | ×156 | ○148 | ×168 | ×182・×181(2回) | ○146 |
| Cowork | ○135 | ×154 | ○133 | ○131 | ○133 |
| Chat | ×155 | ×164 | ×166 | ○132 | ○137 |
ここから言えることが3つある。
- maxだけが3サーフェスすべてで字数を守った。しかも守り方が興味深い。Codeのmaxは箇条書きをやめて一文に圧縮し、「真陽性/偽陽性」という用語で字数を節約した。たくさん考えた分が「説明を盛る」ではなく「制約を満たす工夫」に向かっている
- xhigh(特大)はサーフェスで顔が変わる。Codeでは2回連続で字数違反(182字・181字とほぼ同じ違反幅=偶然ではない)。一方CoworkとChatでは遵守。Codeのxhighは「丁寧に説明しようとして書きすぎる」傾向が再現した
- low〜highの遵守はサーフェスごとにバラバラで、effortと字数遵守に一貫した相関はない。「上げれば指示を守る」は期待しないほうがいい。確実に守らせたい制約は、プロンプトで強調するか出力を検証する仕組みを入れるのが確実
サーフェスでこんなに違う:Coworkの自己検証、Chatのテンプレ
同じeffortラベルでも、どこで動かすかで挙動が変わった。
Coworkはエージェント環境らしく、Task Aで高effortほど「品質保証」を始めた。特大では回答の冒頭に「SemVer 2.0.0 §11の全順序テストで検証済みです」と宣言——回答する前に自分でテストを実行していた。コードも正規表現での構文検証付き(不正入力で例外を投げる)で、Code版の裸実装よりプロダクション寄りだった。

Chatは逆に、低〜高で数式ブロックが一字一句同じテンプレ回答だった(締めの一文だけ微差)。体感も全部5秒前後で差がない。特大からようやく挙動が変わり(5秒→12秒)、テンプレを捨てて一段落に圧縮、字数もクリアした。Chatでeffortの効果を体感できるのは特大以上、というのが実測の印象だ。
Codeは「コードのみを返して」という指示に最も忠実で、どのレベルも装飾なしの裸実装を返した。
参考値:ultracodeは「正しさの証明」を買うモード
スライダー右端のultracode(xhigh + workflows)はeffortではなく別の実行モードなので、参考値として1runだけ試した。
Task Aを投げると「Dynamic Workflow」の実行計画が提示される。承認すると、8つのサブエージェントが2フェーズで並列実行された。
- Generate: 独立実装×3+敵対的テストスイート×2を並列生成
- Verify: 83の敵対的テストケースで全実装を実行検証し、3実装が同一アルゴリズムに収束したことを確認

実測値はこうなった。
| 指標 | xhigh単発 | ultracode | 倍率 |
|---|---|---|---|
| 出力トークン | 1,600 | 58,100 | 約36倍 |
| API処理時間 | 22s | 10分48秒 | 約30倍 |
| $換算 | $0.13 | $3.34 | 約26倍 |
| 5時間枠の消費 | 約+1pt | +9pt | — |
それで出てきたコードの隠しテスト成績は——15/15。lowの1発出しと同じだった。
これは「ultracodeが無駄」という意味ではない。今回の課題はlowでも正解できる難度だったというだけで、ultracodeが買っているのはより良いコードではなく「正しさの検証プロセス」(多数決的な収束確認+敵対的テスト)だ。隠れたバグが致命的な場面には価値がある。ただし日常タスクには明らかに過剰で、1runで5時間枠の約1割を消費する点は知っておきたい。
結論:effortの使い分け指針(実測ベース)
27runの実測から言えるのは次のとおり。
- 仕様が明確な小〜中タスクはlow/mediumで十分。正解率は変わらず、速くて枠も食わない
- 既定のhighはバランス型。迷ったらそのまま
- xhigh/maxは「考える量」を買う設定。ただし増えた思考が説明の饒舌さに向かうか(xhigh)、制約充足の工夫に向かうか(max)はレベルとサーフェスで性格が違う
- 指示遵守(字数など)をeffortに期待しない。守らせたい制約はプロンプトで強調するか、検証を仕組みにする
- Maxプランの実質コストは時間と5時間枠。トークン約7倍・時間約6倍は「無料」ではない
- ultracodeは検証プロセスが必要な時だけ。コスト約30倍の価値が出る場面を選ぶ
注記:この検証の限界
- 単一環境(筆者のWindows機・Maxプラン)での実測で、各セルは1〜2run。統計的な断定はできない
- 出力のばらつきは実際に観測した(max再実行でコメント言語が反転、xhigh再実行で思考トークンが半減)。LLMの出力は毎回変わる前提で読んでほしい
- 体感秒数(Cowork/Chat)は手元計測で誤差が大きい。定量はClaude Codeの/cost・API処理時間のみ
- effortの仕様は今後のアップデートで変わる可能性がある(2026年6月時点の実測)



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